紹介:謎の水装置まんが② ~少数の組合員で戦うことは簡単ではない!~

マンション管理士

先日、©謎水さん(@nazomisusouti)作のWEB漫画、”謎の水装置まんが”について取り上げさせていただきました。

※前回記事
紹介:謎の水装置漫画 ①~大規模修繕で何が起こったか~

※謎水さんの作品はこちらのサイトにまとめて掲載されております。

続く今回では、再度こちらの漫画を参考にしながら、このような不信な総会決議がとられてしまった時のことについてお書きしていきたいと思います。

総会決議を取り消すことは不可能ではない…しかし

まず先に、管理組合における最高の意思決定機関である総会(集会)での決議について見ていきます。

管理組合の総会については、区分所有法第34条に定められています。

1.集会は、管理者が招集する。
2.管理者は、少なくとも毎年一回集会を招集しなければならない。
3.区分所有者の五分の一以上で議決権の五分の一以上を有するものは、管理者に対し、会議の目的たる事項を示して、集会の招集を請求することができる。ただし、この定数は、規約で減ずることができる。
4.前項の規定による請求がされた場合において、二週間以内にその請求の日から四週間以内の日を会日とする集会の招集の通知が発せられなかつたときは、その請求をした区分所有者は、集会を招集することができる。
5管理者がないときは、区分所有者の五分の一以上で議決権の五分の一以上を有するものは、集会を招集することができる。ただし、この定数は、規約で減ずることができる。
(wikibooks:建物の区分所有などに関する法律第34条より)

しかし、この法律の条文には、総会で決議をするといったことについてのみ定められており、その決議を取り消したり、効力を争ったりする場合については一切明文では定められていません。

したがって、一度できあがった総会決議について取り消したり変更したりするためには、新たな総会決議をもって行わなければならないということになります。

しかし、理屈ではそうなるとしても、いったん有効なものとしてなされた決議について、その効力を否定するということは簡単なことではありません。

既に発生してしまった経費上の問題や、管理組合内外の信用問題などを踏まえたうえで、新たに決議するというのは、組合全体で新たによほどの共通認識ができあがるようなトラブルがなければ、かなり難しいことがわかるでしょう。

また、理論的には個人が管理組会(理事長)を相手取って、裁判を起こすことも可能ではあります。

決議不存在の訴え、決議無効確認訴訟などと呼ばれる、そもそもの決議の成立を争うものや、決議が成立したことは認めつつ、決議の取消を訴えるというような形ですね。

ただ、訴訟を起こすとなれば、

・いったん決議はなされたが、その決議に従うには法的な瑕疵(問題)がある
・そもそも総会が正式に開催されたものではなかった
・管理組合みんなの利益に反する(共同利益背反)行為だ

というような事実を自分で立証する必要がありますし、原告にとってかなりの金銭的・時間的負担が要求されます

立ち上がり、闘い続けることの難しさは想像を絶する

ただ、謎水さんのWEB漫画によれば、今回お書きしているような決議の取り消しを考えれば解決する、というような問題でもないことが、とても深く分析されています。

これまでのまんがを読むにつけても、謎の水装置を巡る総会決議の成立に至るまでには、区分所有法上特に問題があるというわけではないのです。

正式に総会が成立しており、その総会での決議なのですから。

しかし、その裏には、

・謎水装置導入の決議へと糸を引くマンション管理士の存在
・区分所有者間での世代間による意識のズレ

など、様々な問題が鳴りを潜めていたのでした。

近年、大規模修繕にまつわるトラブルが報道にてよく取りざたされています。

それもこれも、大規模修繕では大きな金額が動くことと、区分所有者の持つ意識の低さ、専門性の低さを良いことに一儲けしてやろうという業者が暗躍しているからです。

管理会社が言うままに大規模修繕の業者もなんとなく選定したがため、かなりの割高な出費にも関わらずずさんな工事だった…という結末も珍しくないようです。

大規模修繕には、コンサルタント業者やマンション管理士を起用した方がいい、という意見が今やある程度市民権を得ているものと思いますが、そもそもその選定にもかなり気を遣わないといけないという、ともすれば疑心暗鬼にもなりかねないものです。

結局、大規模修繕に関わらず、現代社会を生きていくにあたってはどんなことでもあてはまるのかもしれませんが、やはり

・自分自身でしっかり考えること
・できる限り知識は身に着けておくこと

が肝要だと思います。

しかし、自分自身でできることには限りがあります。
自分ひとりがどんなに正しくとも、この謎水まんがのように自分の意見が押し殺されてしまうという事態も起こってしまうことがある…。

そんな悲しい事態に巻き込まれる人々が一人でも少なくなるよう、こうして謎水まんがのようなコンテンツが発表されるというのはとても大切なことだと思います。

そして私も微力ながらその周知に協力させていただきたいと引き続き考えています。

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