一刻も早く処分したい?”負動産”、甘い話にご用心!

マンション管理士

最近、”負動産“という言い回しを、テレビや新聞などで目にする機会が増えつつあるように思います。

“動産を”“動産とはよく言ったもので、たとえば

・バブルの時に転売しようと思って買ったけれど、バブルが弾けて以降全然売れない。
・売りたいと思っても、価値が低くて仲介業者が積極的に動いてくれない。

というような、マイナスを生み出し続ける不動産のことを指します。

こんな負動産でも、所有者には固定資産税が課せられ続けます。
特にマンションの場合、税金だけではなく管理費や修繕積立金が積み重なるばかり。

「この際、安くても売ってしまえばいいじゃないか」

と思うかも知れないですが、売れたとしても、それまで滞納した管理費や修繕積立金が買主にのしかかって行きます。

だから誰も欲しくない。

バブル期にスキー場の近辺に建てられたリゾートマンションなどは負動産の最たるものです。

定住者がいない(規約で定住が禁止されているケースが多い)ため、マンション全体として管理への意識が低いのはいわずもがな、そんな物件でもし自主管理だということになると、スラム化のスピードも加速するばかりでしょう。

売りたい気持ちがターゲット。新しいビジネスモデル

こんな負動産を手放したい、早く片付けてしまいたいというオーナーの気持ちにうまくターゲットをしぼった商売があります。

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リゾートマンションでは、先ほどもお書きしたように、管理費や修繕積立金の滞納が積もり積もって数十万円というケースは珍しくありません。

あまりに滞納がひどければ競売にかけられることもあるのですが、どうしても管理組合への配当は低くなりがちなので(このあたりも近いうちに記事にしたいと思います)、費用対効果を考えるとそのまま放置…というケースもまた多いわけです。

そして、そんなリゾートマンションオーナーに対し、

「100万円で引き取ります」

という話が持ち掛けられます(金額はあくまでわかりやすい例です)。

今後も固定資産税の支払いや滞納金の督促など、その他様々な所有リスクを考えたとき、

「100万円を払ってでも、この機会に負動産を処分したい!」

という気持ちが勝ったオーナーは、自腹を切って業者への負動産処分を委託するわけです。

業者としては、100万円とともにリゾートマンションを手に入れることができた。
そのお金で滞納分をすべて清算し、売りに出して利益を上げる採算がとれているからこのマンションを買ってくれたんだろう。

しかし、その予測とは裏腹に、実際にはその滞納金が清算されないケースがあるということです。

オーナーとしては、お金を払ってでも処分したかった負動産が手を離れ、肩の荷が下りて嬉しい。

でも、滞納分が清算されないと、管理組合としては痛手を負ったままです。

もちろん、リゾートマンション買取・引取りの業者がすべてこの手法だという話ではありませんし、この業者が詐欺をしているということにもなりませんので、管理組合としてはなかなか頭の痛い話だと思います。

このような業者に複数の戸数を買い占められてしまったとしたら、マンションの管理はとてもうまく立ち行くはずもありません。

今後の目標:負動産を負の財産のままにしない

土地や建物という不動産に関しては、かつて所有することに大きな意味・ステータスがありました。

しかし、今や負動産という言葉が横行するくらいですから、どんな不動産でも持っていればいいという時代ではなくなってしまっているということになりますね。

そして、負動産を処分したいという気持ちを抱えるオーナーにターゲットを絞ったビジネスが生まれ、それこそ結果として詐欺に遭ってしまうというケースも報道されています。

そもそも、マンションによく使われているコンクリートの寿命は、研究によれば60年程度だということで、コンクリートクライシスという言葉も登場しています。

それでも適切な管理と修繕計画により、もっと長持ちさせることも可能だということも判明しています。

子や孫を超えて、”ひ孫の代まで使えるマンション”を掲げて管理組合をサポートするマンション管理士もいます。

売ることや貸すことなど、どうすることもできない負動産が存在していることは、残念ながら事実です。

しかし、できるだけ負動産を負動産のままにしておかない。

行政も、空き家の利用を促進したり、仲介手数料の制限を緩和したり、少しずつ負動産を減らす努力を見せていると感じます。

また、日本の法律では、誰かに所有権がある不動産を勝手に処分することが難しいため、

所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法

という法律が整備されつつあります。

できる限り放置された負動産をなんとかしたいという気概を感じます。

そしてこの問題は、現に負動産を有するオーナーだけのものではありません。

その負動産を相続する予定の現役世代はもちろん、相続が発生して初めて負動産の所有が発覚し、思いがけず負動産を相続してしまうというケースも珍しくありません。
放置された負動産を巡って、火災や倒壊など、全くの他人である自分がトラブルに巻き込まれるということもあるかもしれません。

国民全体の課題として、まずは負動産を負動産として放置しないでおこうという意識を持っておくことが大切なんだと思います。

当ブログでも、負動産を取り上げての記事をお書きしていきたいと考えています。

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